挨拶

グローバル化の進む中、我が国が持続的な発展を遂げるためには世界を先導するイノベーションが必須であることは論を俟たないと思います。大学力は現在及び将来の国力を支えるものであるとの論調も、イノベーションの担い手たる高度人材として、大学における博士育成に大きな期待がよせられていることの現れと言えます。
また、国力増強には地域再生が不可欠であり、産学官連携による地域活性化が求められています。そのため、地域の知的基盤としての大学の役割は一層重要な時代です。しかし、地方大学の多くは小規模であることに加えて地域産業基盤も脆弱な場合が多く、地域の活力の低下や疲弊に十分に対応できているとは言い難いのが現状です。
以上のような背景から、我が国における知の拠点としての地方大学の研究機能の更なる強化、及び、それを通じた地域の活性化、さらには、社会的ニーズに合致したイノベーション博士人材の育成、それを通じたイノベーションが不断に起きる社会の実現などに包括的に取り組むことが求められているというのが私共の認識です。すでにEU(欧州連合)では、産学の共同研究を基本にしたイノベーション博士育成手法として「Industrial Ph.D 制度」のような取り組みが進められています。日本における対策は遅れていると言わざるをえません。

このような事柄を踏まえ、イノベーションが不断に起きる社会の実現を目指して立ち上げたのが、文部科学省大学間連携共同教育推進事業における「産学官協働ネットワークによるイノベーション博士養成と地域再生」の取組みです。

本取組は、『全国の国公私立大学が結集し、ステークホルダーである地方自治体や産業界とのイコールパートナーの協働によりイノベーション人材育成を行うこと』、同時に、『異なる地域の大学、企業間の広域連携を推進することにより、地域の活性化を進め、地方大学の知的基盤の確立に結びつけること』を基本戦略としており、既存の博士育成の枠組みを超え、1大学、1研究科、1専攻の中だけでの教育体系から脱却して、大学間連携の中に産官も参画し、産学官協働によって教育プログラムの企画・運営を実施する今までにない新しい枠組みの下で、広く社会の様々な分野で活躍できる博士の育成に挑戦しています。

産学協働での人材育成を具体的に進めていくためには、今後、更に多くの企業、大学等の参画を得て、イノベーション人材の育成に向け幅広く議論し実践していく必要があります。連携の輪を更に広く、強く広げて、本取組の究極的目標『我が国のイノベーション人材育成方法を根本から変え、輩出された人材により地域が活性化し、我が国も再びイノベーション国家になること』を目指し、小さな一歩を大きな躍進へとつなげたいと考えます。

事業推進代表 梶谷 誠 国立大学法人 電気通信大学 学長
事業推進代表
福田 喬

国立大学法人
電気通信大学 学長